2025年1月20日、日産自動車から「セレナ」が2024年暦年国内ミニバン販売台数No.1を獲得したと発表されました。そこで、今回は「セレナ」も搭載している日産自動車が開発した、e-POWERの仕組と特徴を解説します。
1.e-POWERとは
e-POWERは、日産自動車が開発したハイブリッドシステムで、「EVならではの走り」と「充電しないEV」を実現させるために開発され、100%モーター駆動で走行するシリーズハイブリッド方式に分類させれるハイブリッドシステムです。
e-POWERは、セレナ、キックス、エクストレイルに搭載されているほか、ノート/オーラでは、EVならではしか味わえないスムーズなモーター走行を、充電を気にしないで手頃な価格で体感できるとして、2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。

Nissan NOTE
2.e-POWERの構成
e-POWERの主な構成としては、モーター、バッテリー、ジェネレーター、エンジンで構成されています。車両を駆動させるのは100%モーターが行っており、バッテリーに蓄電されている電力をモーターへ供給し、モーターを回転させることにより車を動かしています。バッテリー残量が少なくなった際は、エンジンとギアを介してつながっているジェネレータを動かして発電し、バッテリーへ蓄電するシステムとなっています。

e-POWERの構成
3.走行シーンによるe-POWERの動作
e-POWERの主な動作としては、EV走行、HV走行、回生(減速)の3パターンの動きをします。
(1)EV走行
【走行シーン】
バッテリの残量が多く、平坦路の低速走行などの低負荷走行時
【動作】
バッテリに蓄電された電力を使って、モーターを回転させる。

EV走行時のシステム動作
(2)HV走行
【走行シーン】
バッテリーの残量が少なかったり、高速道路の走行などの高負荷走行時
【動作】
エンジンのパワーでジェネレーターを動作させることでバッテリーへ充電及びモーターへ電力を供給する。

HV走行時のシステム動作
(3)回生(減速時)
【走行シーン】
減速時
【動作】
減速時の運動エネルギーをモーターで電気エネルギーに変えて、バッテリーへ充電する。

回生(減速)時のシステム動作
4.e-POWERのすごいところ
①発進からの加速力が良い!
モーターの特徴として、発進(0rpm)状態から一気に最大トルクを出すことができるため、加速性能に優れています。
Nissan オーラ | Toyota アクア | Honda フィット | |
0→100km/hタイム | 6~7秒 | 8~9秒 | 7~8秒 |
②自動車税が安い!
エンジンは発電専用で出力が小さくてすむため、排気量を抑えることができます。
Nissan エクストレイル | Toyota RAV4 | 三菱 アウトランダーPHEV | |
排気量 | 1497cc | 2487cc | 2359cc |
自動車税 | 34500円 | 43500円 | 43500円 |
③多彩なドライブモード
運転者の好みでECO、STANDARD、SPORTのドライブモードを選択できます。
ECOとSPORTは、アクセルペダルオフ時の減速度が強く、加速から減速までをアクセルペダル一つのみで行えることから、ワンペダルと言われています。
一方で、STANDARDはガソリン車でアクセルオフした時と似た減速度で、ワンペダルが好みでない方でもe-POWER車を楽しむことができます。
ドライブ モード | 特徴 |
SPORT | より力強いスポーティな走行に適するモード ・アクセルペダル踏み込みに対する加速レスポンスを高めて加速性能を向上させ、力強い走りができる ・アクセルペダルオフ時に、回生ブレーキを強めており、微量な加減速コントロールによって、車両姿勢変化を作りやすい ・ステアリングの操舵力が重めになり、コーナリング中にしっかりとした手応えを与え、スポーティドライブを楽しめる |
STANDARD | EV車のようなスムーズな加速性能と燃費を両立する通常走行に最適なモード ・モーター駆動特有の滑らかでレスポンスのよい力強い加速と、快適な乗り味をバランスよく楽しめるモード |
ECO | 燃費の向上を重視するモード ・穏やかな加速性能により、エネルギー消費を抑えられるモード ・アクセルペダルOFF時の回生ブレーキを強めて、多くのエネルギーを回収できる。また、フットブレーキの踏み変え頻度を低減し、運転ストレスを軽減させる |
5.e-POWERが苦手なところ
①高速領域で燃費良く走行することが難しい
・高速領域では走行抵抗が大きくなりその抵抗以上の駆動力(タイヤが路面を蹴る力)が必要になること
・スピードを出すため、モーターを高回転で回す必要があること
上記2点より、モーター出力が大きくなり、モーターを動かすための電力を賄う為に、エンジンが常時動くため、高速領域では燃費が悪くなってしまいます。
モータートルク、モーター回転、モーター出力の関係について解説
モーター出力は①式で計算できます。
P=2Π×T×n/60・・・・・①
モーター出力 P [W]
モータートルク T [N・m]
モーター回転数 n [rpm]
また、モータートルク Tは②’式で計算することができます。
F=T×i×η/r・・・・・②
T=r×F/(i×η)・・・・・②‘
モータートルク T [N・m]
タイヤ動半径 r [m]
駆動力 F [N]
減速比 i
インバータ効率 η
②’式を①式に代入すると③式になり、駆動力とモーター回転数が大きくなると、モーターの出力が大きくなることが分かります。
P=2Π×{r×F/(i×η)}×n/60
②エンジンの始動タイミングが読みにくい
e-POWERは、冒頭で説明しました通り、エンジンはバッテリー残量が少なくなった際に発電することが基本動作になるのですが、下記の場合にもエンジンが始動する場合があります。
※日産ノートホームページから抜粋 https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/note.html
・バッテリーの残量が少ないとき(発電のため)
・アクセルペダルを強く踏み込んだとき(発電のため)
・ブレーキペダルを踏み込んだとき(ブレーキブースター用負圧生成のため)
・長い下り坂を走行しているとき(減速度を生成するため)
回生ブレーキ中にエンジンが始動する理由について解説
減速度を作るために運動エネルギーをモーターで電気エネルギーに変えて、バッテリーへ充電するのですが、バッテリーに充電がたまりきっているときは、発電機に電気を流して、発電機をモーターとして回転させます。これにより発電機と直結してるエンジンも回転します。
・暖房をONにしたとき(熱源となるエンジン水温を上げるため)
・エンジンが冷えているとき(暖機のため)
・e-POWERシステムが始動している状態でボンネットを開けたとき(整備時の事故を防止するため)
6.まとめ
e-POWERは100%モーター駆動で走行するシリーズハイブリッドです。
e-POWERのすごいところは以下の通り。
①アクセルレスポンスが良く、発進からの加速力が良い!
②エンジンの排気量が小さいため、自動車税が安い!
③多彩なドライブモード
一方で、e-POWERが苦手なところは以下の通り。
①高速領域で燃費良く走行することが難しい
②エンジンの始動タイミングが読みにくい
e-POWERは進化を続け、直近立ち上がる第3世代では従来に比べて高速燃費15%改善。また、エンジンも改良されて静粛性も向上することが発表されております。ぜひ、充電を気にしない電気自動車で快適なカーライフを送ってはいかがでしょうか!
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